2009/02/14

縁を生かすというお話

メンタルヘルス・ウェブログ

以下、縁を生かすというお話です。
一見して印象の悪い生徒の担任となった、ある女性教諭。先入観で、その生徒を評価してしまいながらも、あるきっかけをもとに深い悲しみを背負って懸命に生きている少年の本当の姿と直面してしまう・・・。

人は決して一人では生きてゆけないものなのでしょうが、
と、同時に決して独りきりでもないということであり・・・
出会いの無い人生はなく、人は生きていく中で様々な人物と出会い、その出会いのひとつを縁と言うならば人生は人とのかかわりあいによって幸せにも不幸にもなるのだなと感じます。
「縁を生かす」
その先生が5年生の担任になったとき、一人、服装が不潔でだらしなく、どうしても好きになれない少年がいた。 中間記録に先生はその少年の悪いところばかりを記入するようになっていた。
あるとき、少年の1年生からの記録が目に留まった。
「朗らかで、友達が好きで、人にも親切。勉強もよくでき、将来が楽しみ」とある。
間違いだ。ほかの子に違いない。先生はそう思った。

2年生になると、
「母親が病気で世話をしなければならず、時々遅刻する」と書かれていた。

3年生では
「母親の病気が悪くなり、疲れていて、教室で居眠りする」

3年生の後半の記録には「母親が死亡。希望を失い、悲しんでいる」とあり、

4年生になると
「父親は生きる意欲を失い、アルコール依存症となり、子供に暴力をふるう」

先生の胸に激しい痛みが走った。ダメと決めつけていた子が突然、深い悲しみを生き抜いている生身の人間として自分の前に立ち現れてきたのだ。先生にとって目を開かれた瞬間であった。

放課後先生は少年に声をかけた。
「先生は夕方まで教室で仕事をするから、あなたも勉強していかない?わからないところは教えてあげるから」

少年は初めて笑顔を見せた。
それから毎日、少年は教室の自分の机で予習復習を熱心に続けた。
授業で少年が初めて手を上げた時、先生に大きな喜びが沸き起こった。
少年は自信を持ち始めていた。

クリスマスの午後だった。少年が小さな包みを先生の胸に押し付けてきた。
あとで開けてみると、香水の瓶だった。亡くなったお母さんが使っていたものに違いない。先生はその一滴をつけ、夕暮れに少年の家を訪ねた。雑然とした部屋で独り本を読んでいた少年は、気がつくと飛んできて、先生の胸に顔を埋めて叫んだ。
「ああ、お母さんの匂い!今日はすてきなクリスマスだ」

6年生では先生は少年の担任ではなくなった。
卒業の時、先生に少年から一枚のカードが届いた。
「先生は僕のお母さんのようです。そして、いままで出会った中で一番すばらしい先生でした」

それから6年。またカードが届いた。
「明日は高校の卒業式です。僕は5年生で先生に担当してもらって、とても幸せでした。おかげで奨学金をもらって医学部に進学することことができます」

十年を経て、またカードがきた。そこには先生と出会えたことへの感謝と、父親に叩かれた体験があるからこそ患者の痛みがわかる医者になれると記され、こう締めくくられていた。
「僕はよく5年生の時の先生を思い出します。あのまま駄目になってしまう僕を救ってくださった先生を、神様のように感じます。大人になり、医者になった僕にとって最高の先生は、5年生の時に担任してくださった先生です」
そして一年。届いたカードは結婚式の招待状だった。
「母の席に座ってください」と一行、書き添えられていた。





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