2008/02/06

不法行為責任と契約責任の差異について

メンタルヘルス・ウェブログ

従業員が荷重労働により、多大な心理的負荷がかかり精神障害を発症し最終的に係争事案へと発展してゆく時、企業に民事上の損害賠償請求を求める根拠として通常問題とするのは次の2点での考え方です。不法行為責任と契約責任。
以下、この二つの項目に関して法的にどのような差異があるのかを学びたいと思います。

不法行為責任の根拠・・・
●故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う(民法第709条)
●ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う(民法第715条第1項本文)

契約責任の根拠・・・
●債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる(民法第415条)

過去の係争事例においては企業の安全衛生管理上の義務違反においては不法行為責任を問われるケースが主であったようですが現在では後者の契約責任を問われる場合が増加の一途をたどっているようです。

それでは、企業が民事上の損害賠償責任を負う根拠として通常、問題とされる上の二つの事柄についての差異のポイントは大きく三つ有ります。
1.消滅時効の点
2.遺族固有の慰謝料の点
3.遅延損害金の起算時期の点


1.まず、消滅時効の点については不法行為責任という形で問題にする場合、損害および加害者を知った時から3年以内に損害賠償請求権を行使しなければ時効によってその権利は消失してしまいます。
対して、契約責任という形で問題にする場合は10年間、権利は存続されます。
つまり、被害者側にすると契約責任にて企業の責任を追及する方が有利となります。

2.次に遺族固有の慰謝料の点ですが、不法行為責任で企業の過失を問う場合「他人の生命を侵害した者は、被害者の父母、配偶者及び子に対しては、その財産権が侵害されなかった場合においても、損害の賠償をしなければならない」民法第711条とされており、それに対して契約責任で過失を問う場合は「遺族は契約当事者ではない」という考えのもと遺族固有の慰謝料は一切認められないことになります。

3.最後に遅延損害金の起算時期ですが不法行為責任の場合、不法行為の翌日から損害金が発生することに対して契約責任の場合、被害者からの催告の翌日から損害金は発生します。
結論として2.3の遺族固有の慰謝料及び遅延損害金の起算時期の点に関しては、不法行為責任にて企業の責任を問う方が有利となります。

(参考)
従業員の健康管理問題に関して安全配慮義務(不法行為責任における注意義務)

作業環境整備義務、衛生教育実施義務、適正労働条件措置義務、健康管理義務、適正労働配置義務  等。




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